* す だ か *

僕と君だけの世界

3

・・・・
白い光に包まれて彼は倒れた。彼はそのまま動かない。
ぽた。
何かと思い目元を拭うと涙が流れていた。
でも、さっきと違って何で 泣いているのだろう。もうずっと彼と一緒にいられるのに、何で泣かなきゃいけないんだろう。
君とずっと一緒にいたかった。
君とずっと一緒に笑いたかった。
君とずっと一緒に生きたかった。
もう動かない彼を抱きしめて、あとは火が僕を焼いてくれるのを待つだけだった。
その時、劇団員の一人が入ってきた。赤い髪をしていてつぎはぎが目立つ男。目は見えない。
男はこちらに気づき、何事か叫びながらこちらに走ってきた。
「おい!そいつどうしたんだよ!」
「僕が殺した。」
「!」
その男はひどく驚いていた。それはそうだ。この劇場に火を放って、大好きな彼を殺して、僕は泣いているのだから。
「どうして・・。仲間じゃなかったのか?」
「仲間?よく分からないけど、彼のことは好きだったよ。」
彼の頭を優しく撫でる。この炎の中でも彼の体は確実に冷たくなっていた。
「なんで・・」
「彼が好きだったからさ。彼と一緒にいたかったのに、彼は僕を見ちゃくれなかった。」
見てくれているだけじゃ物足りなかった。
「お前・・。こいつがいつもお前のこと俺達に話していたの知らなかっただろ・・?」
「え?」
「自分の兄ですごく良い奴だって。」
ガラガラと劇場が音を立てて崩れる。もう間もなく劇場は崩壊するだろう。
「くそっ・・・。話は後だ、とりあえず逃げるぞ。」
赤い髪の男は僕の手を引っ張って外に出た。
僕はずっと彼を放さなかった。 


外に出ると懸命な消火作業が行われていた。町の住人が総動員されている。
それでも数人が心配そうに僕達の方に駆け寄ってきた。
赤い髪の男は僕に振り返った。
「いいか。そいつはいつもお前のことを気にかけていたんだ。」
赤い髪の男が教えてくれたのは彼のことだった。
彼があの女の子と会って楽しく過ごしていたとき、彼は女の子に僕のことを喋っていたらしい。
自分に兄がいて、町の人に良く思われていないこと。どうしたら町の人に受け入れてもらえるのかを相談していたらしい。
女の子は嫌がったりせず真面目に相談に乗ってくれていたらしい。
「なら・・・言ってくれれば良かった・・・・。」
そうすれば彼女を殺めようとはしなかった。
そうすれば・・・
「あいつはそういうとこ気取られたくない奴だからな・・」
「そんな・・・」
「今回の劇だってあんたが来てくれるって言うからいつもより張り切って練習もしてた。あんたを家の中に閉じ込めておくしかない自分が嫌だっていつも言ってたからな・・。」
見ていてくれた。
彼は僕を見ていてくれた。
僕には君しかいなかったから。君しか見れる人がいなかったから。
だからせめて君だけは僕のものにしたかった。
君にはたくさんいた。たくさんいる中で僕を見てくれていた。
僕以外の人を頼って、僕をずっと見てくれていた。
僕は、何が不満だったんだ?
強く、強く彼を抱きしめる。その力が強ければ強いほど生き返る可能性が高くなるとばかりに。
「・・・っ。あぁ・・・。ごめんよ。ごめん・・・っ。」
泣いた。何もできないから泣いた。
「お前さ・・。劇団に入らないか・・?」
「え・・?」
「これからはお前だって自分で生きてかなきゃいけないんだ。それに、あいつと、あいつの彼女の願いだよ。」
それは、あの女の子が彼に提案した計画だという。
「そんな・・。僕なんか、みんな嫌がるだろう?劇場を焼いた。彼も殺した。」
「そのぐらいでビビる奴らじゃねぇよ。」
彼を見る。すっかり冷たくなっていて、ぐったりと死んでいる。

だめだよ。彼と勝手に約束したんだ。
「君を殺して僕も死ななきゃ。」
ごめんなさい。きっとこれが僕にできる罪滅ぼしだから。
君と同じ所に行ける気がして、君にかけた魔法と同じ魔法を自分にかけた。
白い光に包まれて、とてもキレイだ。
意識が薄れていく。
周りが何か言っていたけどよく聞こえない。
君しかいらない。
他にはいらない。
君以外が特別になるのが恐い。
君への気持ちが嘘だったような気がして恐い。
どうしてこうなってしまったんだろう?
どうしてもっと早く気づかなかったんだろう?
世界はこんなに広かった。