* す だ か *

お決まり事

 

「クジャは強いな」
幼いジタンはそう言った。
クジャとジタンは、たった今テラでの散歩を終え、パンデモニウムに戻ってきた所である。
その間に現れるモンスターは、全てクジャが魔法で軽く一掃していた。
それを手をつなぎながら隣で見ていたジタンは、幼いながらも色々と考えていたのであろう、唐突にそう言ったのだ。
クジャは元々ジタンの事は好いていなかったが、”強い”と言われた事に少し機嫌を良くして「まぁね」と応えた。
「オレもクジャみたいに強くなれるかな」
ジタンは無垢な瞳をキラキラ輝かせて少し興奮しているようだった。
── 単純な奴。なんでガーランドはこんなモノにご執心なのか ──
「オレも魔法使ってみたいなぁ。ドーン!バーン!ってやつ!」
ジタンはクジャの手から離れて、走りながら「ドーン!バーン!ババーン!」と繰り返してはしゃいだ。
ジタンにとっては魔法を表したごっこ遊びであったのだろうが、クジャには奇怪な行動でしかなく、「ケガをされて迷惑するのはこっちだ。走り回るんじゃないよ。」と、冷たくあしらった。
ジタンは「ドーン!バーン!」と言いながらクジャの許へ戻ってくる。
どんな事があっても、ジタンは最後にはちゃんとクジャの所に戻ってくる姿だけは
クジャもジタンの事を『愛しい』と思えた。


クジャが目を覚ませば次元城に居た。
暖かな日の当たる次元城でいつの間にかうたたねしてしまう事は多々あり、今回もそれのようだった。
── いつコスモスの奴らに殺されても仕方ないな…。 ──
この場から一刻も早く立ち去るべきであると考え、立ち上がると後ろから「お」と声がした。
「なんだ。起きたのか、クジャ。」
「!ジタン・・・!どうして」
── 味方を呼ばれたかもしれない。 ──
そう考え、焦る。
「あー、心配すんな。戦う気はねぇし、ここにお前がいる事を知っているのはオレだけだ。」
「・・・・」
ジタンは敵意が無い事を表すように両手をひらひらさせて見せたが、クジャは対立的に警戒を解かずジタンを睨みつける。
「・・・何か、用かい?」
「…お前なぁ。」
呆れたようなため息混じりの返事が返ってきた。
「こんな所に1人で昼寝なんかしてたら格好の餌食じゃねぇか!
そうならないためにオレが周りを見てきてやったの!分かる!?」
クジャはその説教に驚くと同時に呆れた。
「・・・君、僕が敵だってこと分かってる?」
「あ?何がだよ」
「普通敵が無防備に寝ていたら 今、君が言ったように格好の餌食なんだよ!?
それを何!?何で逆に守ってるのさ!ばっかじゃないの!?」
ジタンは自分が説教したつもりが逆に説教されている事に疑問を抱きながらも、やはり自分の行動がおかしかったのだろうかと自信が無くなってきた。
「え、っと・・・そうか、・・・そうなのか・・・?」
「本当に馬鹿だったのか…。ふん、まぁいい。この借り、今ここで返してあげるよ!」
クジャはいきなりジタンに攻撃を仕掛けた。
それに困惑しながらも即座に対応できるジタンは流石と言える。
そこから兄弟喧嘩が始まった。

・・・

「ケアル」
「くっそ…いってぇ〜・・」
長い兄弟喧嘩もクジャがカウンターで放った『フレアスター』によって決着が着いた。
始めから空中からの攻撃で安全策を取っていたクジャはほぼ無傷で、今はジタンの治療を気だるそうにしていた。
「やっぱりクジャは強いな」
クジャは驚いてジタンの顔を見た。
── これは昔の記憶だ ──
さっきのうたたねで見た古い記憶の夢を思い出し、「まぁね」と応えた。
「クジャより強くなってやる」
ジタンは曇りのない瞳でクジャを見て、にっと笑った。
「しっかし、オレもクジャみたいな魔法使いたいなぁ。
こう、ドーン!バーン!みたいなやつ。」
「ふふふ・・・、君も変わらないねぇ、流石に走り回ったりはしないよね?」
あまりにも似たような事をジタンが言うのでクジャは笑いを堪えるのに苦労した。
「?何のこと言ってんだよ?」
「何でもないよ。君の頭の中は幼児のまんまだって言ったの。」
「はぁ?何だよ一体。」
── そうして君は、最後にはちゃんと僕の所に帰ってきてくれるんだ ──
そう思うと、たまらなく幸せな気がした。