* す だ か *

記憶

3

イーファの樹は荒れ狂っていて近づきにくかった。
その暴れまくっている枝(?)の一つに飛び乗ると、そのまま枝は龍のようにくねくねと樹の中心へ進んでいく。
「うおっ!?」
いきなり樹の根がオレが乗っていた枝にぶつかった。
・・・あと少しでケガどころじゃなかったぞ・・・。
改めて自分が 狂っていることに気づく。
声しか分からない・・・いや、声しか思い出せないやつのためにオレは命をかけて助けに行くんだ。
まぁ、オレの座右の銘が”誰かを助けるのに理由はいらない”だから仕方がない。
うまく枝や根に飛び移って進んでいたらいつの間にかイーファの樹の幹に達していた。
その幹に小さな・・・と言っても人が軽く大人が10人は入れそうな穴が開いていた。
オレはそこに勢いよくダイブする。
で、ちょっと後悔。
意外と深かった。
「うわぁぁああ!!?」
「!?」
落下が止まったように思えた。
ちょうど樹の内部にベッドのようなところがあって、
そこに・・・いた
しかし落下は止まるはずもなく下まで一気に落ちた。

「う・・うぅ・・ってー・・」
あの高さから落ちてすり傷程度で済んだのは下が樹の葉やらなんやらで埋め尽くされていたからだろう。
「この上・・・だったな」
見上げて服をはたいてから、樹の中にあるもう一本の木のようなものに登り始めた。

「よっと」
大して難もなく、すぐにあいつのところに着いた。
「おい、大丈夫か?」
ふわふわのベッドの上で横たわっているあいつは信じられないものを見るような目でオレを見た。
「どうして・・来たんだい・・?」
「誰かを助けるのに理由がいるかい?」
「・・・・・君の・・僕に関する記憶は・・全て消したはずだ・・」
「お前なぁ・・勝手なことしてんじゃねぇよ。オレがお前のことを忘れるわけねぇだろ?お前のせいでオレ達はここまで戦ってきたんだ。」
そうだ・・。こいつを見て全部思い出した。
オレがみんなと別れてこいつを助けに行ったとき、イーファの樹の枝とかがオレ達に襲いかかってきたんだ。
それでオレ達は閉じ込められて、なんとか脱出しようと試みたけどどうにもならなくって・・。
「なんでオレの記憶奪ったんだよ」
「君は・・優しいからね。こうしてまた来るかもしれないだろう?
ま、意味はなかったらしいけど。」
「あたりまえだ。お前を助けるためにみんなと別れてきたっていうのに、
オレだけ逃げて帰ってきたんじゃかっこつかないだろ。」
何か言いたげに、だけど言いにくそうにこいつは目をそらして口をもごもごと動かす。
「君が・・僕を想って・・胸を痛めるかもしれない・・だろう?」
顔を赤くして震える声でつぶやいた。
それに呆れてわざとらしくため息をつく。
「ばか。兄を想わない弟はいねぇよ。」
くしゃりと頭をなでてやる。
イーファの樹はますます荒れ、ドカン!とひときわ大きな音をたてた。
「さぁ。早く帰るぞ、クジャ。」
差し出した手を「あぁ」と笑ってクジャは握り返した。