* す だ か *

ED後妄想

真っ暗だ。ひどく寒々しくて何もない。
上から降ってくる光は、けれど闇に溶かされてしまう。
僕の体もだんだんと闇に溶けていく。
美しい白い肌も、美しい銀の髪も、全て闇に染まっていく。
僕は何もできないまま闇に呑まれてしまった。
無い頭の中で 無い腕を伸ばして 無い瞳から涙を零す。
無い頭の中で 無い口を動かして 無い言葉を口にする。
なんだか意識も遠くなってきた。
確実な死の訪れ。
怖い。 怖い。 怖い。 怖い。 怖い。
独りは嫌だ。怖い。助けて。
瞬間 光が差した。
何も無いはずのこの世界に人の手が差し伸べられる。
僕は少し躊躇った後 その手をそっと握った。 


「クジャ!?」
ずっと眠ったままだったクジャがゆっくり目を開いた。
今まで握っているだけだった手に握り返されるのが分かった。
「・・・ジタン?・・・ここは?」
イーファの樹が暴走を始め、クジャを庇ったままのオレは意識を失った。そして気づいたときにはオレもクジャもイーファの樹の外に放り出されていたのだ。どのくらい経っていたのか、その頃にはイーファの樹の暴走は治まっていた。
仕方なくオレはクジャを背負って使われていない民家に勝手に泊まらせてもらうことにしたのだ。
それからずいぶん経った。もう死んだんじゃないかってビクビクしてた。
良かった・・・。本当に良かった・・。
「・・・?ジタン?」
「ん。おぉ・・・それがよく分かんないんだよなぁ・・。とりあえず外側の大陸ってことだけは分かるんだけど・・」
そぅ。と言って目が伏せられる。
「ジタン。」
キッチンに行こうとして呼び止められる。
「静かだけど・・町・・ではないんだよね?」
「あぁ。森の中に建ってた民家・・っていうか小屋だ。でも近くに川があるし、魚もいるから安心しろ。
そんなに食い物に困ることはないぞ。」
町に連れて行きたかったが、仮にもガイアを滅ぼそうとしたやつだ。
そこでどんな目にあうかはだいたい予想がつく。
例えどんなに人の良いやつが集まった村でもその中で一人はクジャを恐れるだろうし、良い風には思わないだろう。
今のクジャには、そんなことを少しでも思われてほしくなかった。
「そぅ。」
クジャは特に気にした風もなく、さらりと答えた。
「大人しく待っとけよ。」
と言って食事の準備に向かった。 

魚を獲って、山菜を採って、果実を探す。
そんな生活にも慣れてしまった。
料理の腕も前から悪い方ではなかったが、一段と磨きがかかった。
それほどクジャが目覚めるのは遅かった。
死んでるんじゃないかって何度も思った。
でも毎日握ってる手は温かくて こいつも必死で生きてるんだなって思って・・。
本当に・・本当に良かった・・・
「じゃあ、今日はあいつが喜びそうな物を作ってやろう!」
言葉にするとうれしそうな自分の声が聞こえた。 

それからしばらくの間はここで暮らすことになった。
いろいろと落ち着いてから帰っても遅くはないだろう。
その間、クジャの体調は特に良くなったり悪くなったりしなかった。どちらかといえば悪くなっていたのかもしれない。
「そうだ。外に出てみよう!この辺綺麗なんだ。」
クジャも同意してゆっくり立ち上がった。
オレはクジャを気遣いながら外へ連れて行った。
「あ、こっち!絶景なんだよ!」
オレはある川に走った。
「あまり走らせないでおくれよ。」
ゆっくり歩いてくるクジャを急かす。
「おーい!早く来いって!」
そこはオレのお気に入りの場所。目が覚めたら絶対に連れて来ようと思っていた。
草木が生い茂り、キラキラと光る川。
全てが神秘的に見えて、とても美しい聖域のような場所。
クジャはその美しさに魅了されしばらく呆けていた。
「綺麗だろ?この辺りの森は全部が全部綺麗だけどさ、ここは特別綺麗なんだよ。」
「・・・あぁ・・・綺麗だね」
ため息が混じったような心からの言葉。
「お前だったら絶対気に入ると思ったんだ。予想は当たったみたいだな。」
「フフ・・。そうだね。」
やわらかく微笑むクジャはこの聖域に似合っていて思わず見惚れる。
「お前もそうしてたら普通なのになぁ。服とか性格とか直せよな。」
「ジタンこそ、その性格のせいで浮気してからじゃ遅いよ?」
この聖域と他愛もない会話のせいか、まるで時間が止まっているようだ。
しばらく、そんなことを話していた。