* す だ か *

ego

 

あなたが死ぬ原因は私でいい。
あなたが死ぬ前に目にする者は私がいい。
私の姿を見ながら死んでほしい。
私が死ぬ原因もまたあなたがいい。
あなたの姿を見ながら死んでいきたい。
一見矛盾しているようだがそうでもない。
あなたと私が共に殺し合って朽ちていくのが私の中では最高の最期だ。
だから、
「私に殺されてはいただけませんか? …信長公」
ふん、と鼻で笑い飛ばされる。
「貴様にそうやすやすと殺される余ではないわ。うつけが」
自然と口角が上がり、笑みを作った。
「そうでなくては面白くありません」

ガラリと天井の一部が落ちた。
今いる建物に火が点いてから数分、すでに建物は崩壊を始めていた。
熱に浮かされるようにゆらりと一歩近寄ると、戦闘が始まった。
本当はこのまま建物と共に朽ちてもよかった。
互いを目に宿しながら死ねるのならそれでも良かった。
しかし、それでも動いてしまったのは彼の最期を全て我が物にしたいという欲望が強かったからだろう。
あなたが最期に見るのは私。
あなたが最期に戦うのは私。
あなたに最期を与えるのは私。

死ね死ね死ね死ね。早く死んでしまえ。

されど刃を交えるこの喜び。この猛り。
楽しく、愛しいこの時間が永遠に続けばいいとも思う。
そう、まるでこの時の為に生きてきたかのような錯覚。
私たちの為に世界があるかのような錯覚。
きっとこうなるために生まれてきた。
あなたを愛し、殺めるために私が
私に裏切られ、殺すためにあなたが
それはなんて素晴らしくて悲しいことでしょう!
互いを殺すためにに生まれてきたが故、愛し合うことはおろか信じ合うこともできないなんて!
もっともっともっともっとこの戦いを続けたい。
ガラガラと崩れていくここでは無理な話だけれど。

そうだ、崩れるよりも前に殺さなくてないけないんだ。
時間よ止まれ。私とあなただけが生きれる世界を作ってくれ。
微かな焦りが生じ、攻撃も荒くなる。
流石は征天魔王と言うべきか、その焦りを見逃すことなく攻撃の手が早くなった。
いけない。ここで最も避けなくてはいけないのは私が殺されること。
ここで殺されたら、私はあなたが数多く殺してきた中の価値の無い一人になってしまう。
それだけは何があってもいけない。

早く、死んでください!

勢いよく振り下ろした鎌が弾かれた。
続けて2撃目が繰り出されようとしていた。
しかし、遅い。
刃が届くよりも先に、弾かれた反射で振った私の鎌があなたを裂いた。
散る赤。斬れる音。
私の心に浮かぶのは歓喜と嘆き。
口から出た笑いは心の悲鳴。
よろめいたあなたの頭を鎌が割った。
明らかなあなたの死。

とたんに静まり返った気がした。
さっきまで興奮していた血はさっと引いて、虚無感が支配した。
たくさん殺しても何も感じなかった。むしろ心地よくさえ思った。
しかし、どうも胸に隙間があるようで、悲しくて、無性に泣きたかった。
人を斬る痛み、大切なものを失う悲しみ、今まで感じなかったモノが全て流れ込んできたかのようで、ただただ辛かった。

「・・・つまらなかった、のでしょうか・・・?」
自分に問いかけてみたが分からなかった。
そういうことだ。きっと。
だから、こんなにも悲しいんだ。