三つ目の名
四つ目
女は重い体を起こした。
ソファで寝てしまっていたらしく、無理な体勢で長時間いたために体が少し痛い。
─長い夢だった─
夢は夢ではないかのように、あまりにも現実的で感覚すら思い出せる。
彼女は一度も銃を持った事が無い。
そのはずなのに、銃の重さと持ち方と、血と硝煙の臭いが今にも蘇る。
ソファで仰向けになったまま手で銃の形を作り、何も無い宙めがけて彼女は「バン!」と小声で言って撃つ真似をしてみた。
それを不審に思ってか、男が彼女のいるソファを覗いてきた。
長く、白い髪に細長い印象の体。彼女の銃の先は、ちょうどその胸に向いていた。
「どうしました?」
優しくて、静かで、安心する声。
半分眠った頭の彼女は、ただぼんやりと「懐かしい」とだけ思った。
「今、何時・・・?」
男は壁に掛けられている時計を見た。
「夕方の5時ですね。曇っていて分かりにくいですけど」
言われて窓の外を見ると、今にも降り出しそうな曇り空。
「寝ぼけていたのですか?」
くすりと男は笑った。
「そうね、・・・寝ぼけてるみたい」
彼女は男の長い髪を軽く握った。逃がさないように。
彼女の胸は音を立てて鳴り、息をする事すら辛く感じた。
覚えている?貴方は最後の約束を覚えている・・・?
ねぇ
「光秀」
男の目が見開かれる。
男の名は”光秀”という古風なものではない。
しかし、男が驚いたのは呼ばれた名が自分のものではなかった事からではない。知った名だったからだ。
いつだったか分からない。昔、自分が生まれるよりもずっと前。
確かに自分はその名だった。
男ははっと息を呑み、記憶を手繰り寄せた。
「帰蝶・・?」
その時代では、戦は無かった。
幼くして嫁ぎに行く事も無かった。
彼女の夢であった世界。
そこで会えた。再び会えた。
二人の再開を祝福するかのようにザーという音と共に雨が降り出した。
ソファで寝てしまっていたらしく、無理な体勢で長時間いたために体が少し痛い。
─長い夢だった─
夢は夢ではないかのように、あまりにも現実的で感覚すら思い出せる。
彼女は一度も銃を持った事が無い。
そのはずなのに、銃の重さと持ち方と、血と硝煙の臭いが今にも蘇る。
ソファで仰向けになったまま手で銃の形を作り、何も無い宙めがけて彼女は「バン!」と小声で言って撃つ真似をしてみた。
それを不審に思ってか、男が彼女のいるソファを覗いてきた。
長く、白い髪に細長い印象の体。彼女の銃の先は、ちょうどその胸に向いていた。
「どうしました?」
優しくて、静かで、安心する声。
半分眠った頭の彼女は、ただぼんやりと「懐かしい」とだけ思った。
「今、何時・・・?」
男は壁に掛けられている時計を見た。
「夕方の5時ですね。曇っていて分かりにくいですけど」
言われて窓の外を見ると、今にも降り出しそうな曇り空。
「寝ぼけていたのですか?」
くすりと男は笑った。
「そうね、・・・寝ぼけてるみたい」
彼女は男の長い髪を軽く握った。逃がさないように。
彼女の胸は音を立てて鳴り、息をする事すら辛く感じた。
覚えている?貴方は最後の約束を覚えている・・・?
ねぇ
「光秀」
男の目が見開かれる。
男の名は”光秀”という古風なものではない。
しかし、男が驚いたのは呼ばれた名が自分のものではなかった事からではない。知った名だったからだ。
いつだったか分からない。昔、自分が生まれるよりもずっと前。
確かに自分はその名だった。
男ははっと息を呑み、記憶を手繰り寄せた。
「帰蝶・・?」
その時代では、戦は無かった。
幼くして嫁ぎに行く事も無かった。
彼女の夢であった世界。
そこで会えた。再び会えた。
二人の再開を祝福するかのようにザーという音と共に雨が降り出した。